『地獄の大腸内視鏡検査』後篇
おかしい。
目が、冴えわたっている。
おばちゃん看護師は確かに言った。
「少し眠くなりますよ~。」
と。
繋がれた点滴の分岐点から、彼女は確かに、安定剤を注入した。
しかし
どぅえぇ~!ありえないほど目が冴えわたってるぅ~!!
視界はすっきり、なんなら最高に気分が良かった。ある意味薬が効いていたのかもしれない。元々、薬や麻酔が効きやすい体質だ。おまけに超空腹である。
達してしまったのかもしれない。悟りの境地に。
いや~しゃっきりした気分で受けるのもアリなんじゃない?人生初の内視鏡よ?なんならモニターも直視できちゃうんじゃない?
なんて浮ついていると、豊かなひげを蓄えた、童顔だけど実際は結構年齢いってるタイプの顔をした(失礼である)内視鏡担当医がやってきた。
と、突然、いきなり、suddenly
指が入ってきた。
ええ!?麻酔は?せめて鎮静剤は!?事前説明では鎮静剤の使用もありますと言ってたよね?騙したな!!
騙したな!!ヒゲ医者!!!
実際痛くはないものの、圧迫感がすごい。
そして、ヒゲ医者はうんうんと頷いたあと、またも予告せずにカメラをぶち込んできたのである。
大腸内視鏡検査は、7~10分ほどかけてカメラを大腸の端まで挿入する。
そして、ゆっくりと抜きながら、ポリープがないか、異常がないか確認、そして大量の写真を撮る。
とにかく往路が痛かった。
基本的には、異物がお腹のなかを蠢いている違和感。だけである。
しかし、人体の不思議、このちっせーお腹の中に、8mもの腸が収納されている。つまり、8mの腸がギュッと詰め込まれているのである。
このちっせーお腹に。
たくさんのカーブがあるのだ。カメラはカーブもずんずん進んでいく。
この瞬間が本当に本当に痛い!女性ならわかるかもしれないが、生理痛のピークの痛みを30倍くらいにした感じ。息が止まって、一瞬視界がホワイトアウトする。
しかもその瞬間、おばちゃん看護師がカメラを通しやすくするためにお腹を全体重で押してくるのだ。
ダッッ・・・!
って声が出た気がする。わたしは3つくらい急カーブがあったかな。
ダッッ・・・! ン”ッッ・・・! ゴッッ・・・!
みたらしが好きです。
「はい、奥まで到着。」
ヒゲ医者は結構クールな人だった。そして復路はびっくりするほど痛くなかった。検査室に、カメラのパシャパシャした音と、勝手に出るガスの音だけが響く。
途中、ヒゲ医者とおばちゃん看護師がわたしの大腸を見ながら笑いあっていた。
自分のことを棚に上げて言うが、失礼である。
あ、そういえば、モニターは見られなかった。頭はスッキリしてたのに。そもそもヒゲ医者にお尻向けた体勢だもんね。考えなくてもわかる~!
無事に検査が終わった。おばちゃん看護師が、点滴の分岐点に注射器を当てた。
「今度は、頭がスッキリする薬を打ちますね~!」
えっ・・・もう十分冴えてるけど、もっと?
ちゅ~という感覚の直後、まさかの、急激な眠気がわたしを襲った。
大腸は綺麗でした。ポリープも無かった。先月切除した虫垂の切り口も見せてもらったけど、本当にカルチノイドがいるのか?と思うくらいツルツルしていた。
これで、手術への身体の準備はほぼ整いました。
次は、入院に向けての準備だなぁ。新しいパンツ買わなきゃ。